スパクイジーンの仕掛け人

スパクイジーンの登場

身体に悪い食べ物は「美味しい!」といわれるが、スパクイジーンは体に良く、見た目も良くて美味しいのだ。

1995年、タイのホアヒンにチバソムがオープンした年にプレスツアーがあり、タイ政府観光庁のアレンジで日本からも主要トラベルメディアが取材で訪れている。その中に、トラベルライターとしてベテラン級の方がおりその彼が帰国後の感想を筆者に一言、「病院食、精進料理のようなものを食わせられた!」と。しかしだ、その後筆者もチバソムに行き当時としてはアジア初のヘルススパ(業界用語でデスティネーションスパ)を体験し、その病院食・精進料理と表現されたスパクイジーンを食したが、それはとても美味しくお洒落な料理と感動したものだ。筆者、1996‐97年チバソムのセールス&マーケティングを日本で行っていたので、その当時から普通の人よりはスパクイジーンには詳しくなっていたのだが、その仕事1年間でギブアップ。正直日本でヘルススパなるものの理解は進まなかった。もっとも、日本ではスパを未だにエステと表現する方達もいるのだから、早すぎたと言えばそうなのかもしれない。

ウエルネスリゾートで一般化するスパクイジーンのコンセプト

現在ウエルネスコンセプトのリゾートやホテルで出される食事の基本は、いわゆるヘルシーフードでスパクイジーンのコンセプトの影響を受けている。勿論、そこにスパがあれば、当然スパクイジーンとしてメニューの中に存在する。日本においても、そのホテルやリゾートにスパがあれば、スパクイジーンは一つの料理カテゴリーとして理解されているに違いない。それは単にヘルシーなだけではなく、自然の恵みを享受し心身を浄化するという哲学に基づく料理である。素人表現で言えば、クールに美味しく視覚的にも美しい。しかし、具体的にスパクイジーンとはいかなる料理かというのは、料理人ではない筆者が話すべきではないと思うので、ここではこのスパクイジーンを確立させた元シェフを紹介する。

スパクイジーンのシェフからホテリヤ、そしてスパコンサルタントへ

このスパクイジーンが世界で注目されるようになったのは、実はチバソムからである。
シェフはアンドリュー・ジャッカ。出身はオーストラリア。
スパ・ウエルネスの世界で彼ほど名の知れた人はいない、と筆者は考えている。

彼は1995‐2000年の6年間チバソムに勤務し、スパクイジーンを料理のカテゴリーとして確立し、1998‐2000年の3年連続、彼の料理はコンデナスト・トラベラー誌の読者が選ぶ世界一のスパクイジーンとして受賞している。彼のチバソムでのタイトルはEAM(エグゼクティブ・アシスタント・マネージャー)にまで昇進している。これは、日本語では副総支配人に当たる。

チバソムの後1年間の短期間だが、現在世界一と評されるウエルネスリゾートのカマラヤの立ち上げに協力。

その後バンコクのスパ・オリジンズにダイレクターとして参加。このスパ・オリジンズはスパ立ち上げからマネジメントまでの一貫したスパコンサルに特化した会社で、彼はアジア全域、ヨーロッパ、そして遠くは南米までの幅広い活躍を行っている。因みに、スパ・オリジンズは毎年のように各種のビジネスアウォードでスパコンサル会社として受賞を重ねている。スパのコンサル会社はバンコクに何社も在り世界で活躍しているが、スパクイジーンを直接コンサル出来る会社はスパ・オリジンズだけかもしれない。

そして、アンドリュー個人としては、タイスパ協会会長 2007~13年アジアパシフィック・スパ&ウェルネス連合(Asia Pacific Spa & Wellness Coalition)会長 2009~13年、2015年11月~現在、ワールドスパ&ウェルビーイングコンベンション 会長 2012ー16年、他世界的なウェルネス諸団体のアジア地区の代表を務め、2013年にタイスパ&ウェルビーイング・アワードの殿堂入りを果たし、2020年ドバイで開催された第1回ホール・オブ・ウェルネス・アワードでは「グローバル・パーソナリティ/業界貢献者」として表彰されている。他にもウェルネス関係の重要な組織の会長や代表を務め、世界各地に出向き講演活動、大学での講義、業界イベントのオーガナイズなど、スパ&ウェルネス業界の専門的な教育や発展に継続して貢献している。

スパクイジーンから始まったアンドリューのスパ&ウェルネスに対する情熱をもって、引き続き我々をリードしてくれると信じているが、彼ほどの後継者がそろそろ現れてくれることも願う時期に来ているのも事実だ。

Thank You、Andrew!

スパブームの到来によりヘルシーフードとしての和食にも注目が集まり、海外ではその種の専門レストランも登場してきている。
ウエルネスコンセプトに触発されたレストランでは、オーガニック素材のみで料理される日本食もメニューに並ぶ。

バンコクの市内レストランでの食事