海外ホテルチェーンのウエルネスの取り組み方

フォーシーズンズ・バリ・ジンバラン

海外でウエルネスツーリズムといえば、それはホテル業界そのものなのですが、日本の宿泊業界ではその認識が薄いので、その具体性が分かりづらいですね。

もともとは、スパのイノベーションから始まったウエルネスツーリズムですが、スパはホテルの付加価値として誕生したものです。それは消費者の隠れた需要の発掘そのものでした。そして、当初スパを設けてきたホテルの多くは独立系ホテルです。現在ではリゾートホテルではスパを置くか、スパは無くてもそのコンセプトでホテルを運営し、ウエルネスな環境やウエルネスプログラムを持つことで、ウエルネスリゾートの仲間入りです。

チェーンホテルのウエルネスとはオーナー次第

スパの人気が確立した後に、インターナショナル系のチェーンホテルもそのトレンドを追うようにスパの設置をしてきましたが、チェーンホテル自体は、ホテル運営は出来てもスパやウエルネスプログラムの運営ノウハウを持っていません。他ホテルが持っているから我々も持ちたいと思っても、ホテルオーナーがその投資に同意する必要があります。オーナーが同意したとして、そこで登場するのがホテルビジネスを知っているスパオペレーターやスパ・マネージャーになります。
しかし、ホリスティックなウエルネススパのリゾートに対しては、チェーンホテルはそう簡単に手は出せません。そこで、彼等はて手っ取り早い方法を取ります。ウエルネスホテルのマネジメント契約の獲得やウエルネス特化型ホテルのブランド買収などです。

シックスセンシズのワッツ

IHGがシックスセンスのブランドを持っているのは、まさにこのブランド買収です。これにより、IHGはウエルネス目的の客層の取り込みが出来ることになります。
最近マリオットは、名の良く知れているウエルネスリゾート、フィリピンのザ・ファームを彼らのポートフォリオ(※本内容は3月11日時点ではWebに未反映。)に加えました。それまで、マリオットには数多くのブランドとホテル数を持ちながら、ウエルネスに特化、あるいはそのコンセプトとするホテルを持っていなく、ある意味世界のトレンドからは遅れていたとも言える状態でした。

フォーシーズンズのナムハイ・ホイアン

同一ブランド同一コンセプトは意外と難しい

ブランドコンセプトはあるとはいっても、バラバラなオーナーさんの集まりになるとそれぞれの環境の違いもあり、細かなところでまとめるのは難しいものです。それが、ウエルネスとなると、きわめて個人的な事柄に触れることになりますので、規模の大きなホテルチェーンではそのマネジメントはとても難しくなります。
ところが、ラグジュアリーホテルチェーンでウエルネスをその当初から取り組み、素晴らしいウエルネスリゾートを各地で作り上げているのがフォーシーズンズになります。その取り組みはやはりアジアから始まっています。その理由を紹介しましょう。

チェーンホテルの場合、各ホテルのオーナーがスパも持つ気にならないとチェーンホテルとしては、スパを持っているホテルに客を取られるのを傍で見るしかありません。東南アジアのスパブームの到来をいち早く感じ取ったシンガポールのHPL(※シンガポールを拠点とする著名なホテル投資・運営会社)は、1998年フォーシーズンズにマネジメントを依頼しているバリの高級ビーチリゾートで有名なジンバランのフォーシーズンズからスパを開始します。同時期にタイの会社、Minorはチェンマイのフォーシーズンズでスパを開始します。因みに、タイのマンダラスパは、このMinorが当初、資生堂と組んで行っていました。
フォーシーズンズがやる以上、今に通じるウエルネスコンセプトの本格的なスパです。特にHPLは、アジアの他の各地にもフォーシーズンズとして、他のホテルが羨むレベルのスパを次々にオープンさせていきます。これによりフォーシーズンズが世界的チェーンホテルの中では、群を抜くウエルネスリゾートを展開することになります。HPLは他にも多くのリゾートホテルを持ち、フォーシーズンには15軒のホテルを依頼しています。
HPLはスパブームにいち早く反応し、その中には常に世界トップリスト入りするコモシャンバラもあります。その知識とノウハウを持っているホテルと組むことで、フォーシーズンのレベルが他のホテルチェーンに比し、結果として高くなったということでしょう。

フォーシーズン・ランカウィのジャングルトレッキング

現在、各ホテルチェーンでは、各地域に任命したスパダイレクターがマネジメント管理やオペレーション或いは開発等を担当していますが、これはあまり上手く行っているようには見えません。やはり同じブランドであっても、各ホテルにはそれぞれのオーナーが存在し、オーナー側の独自の方針や意向を反映させたい思いとの間で、ブランド側が開発を進める難しさがあります。
しかしフォーシーズンでは、2001年以降ルイーザ・アンダーソンが初のスパ事業地域統括責任者となり、現在はバリ、モルディブ、タイ、ベトナム、マレーシアに点在する10のスパを統括し、他のアジア地区のスパ開発も手掛けています。この10軒というのがスパやウエルネスに理解の高いHPL7軒と、Minor3軒であることが彼女を働きやすくさせています。よって、フォーシーズンのスパは単なるスパから、ホリスティックなウエルネスリゾートへと進化し、フォーシーズン全体のレベルを上げることに貢献しました。これはチェーンホテルがウエルネスコンセプトで展開する成功例と思われます。

Luisa Anderson Spa Business Photo:Himawan Sutanto